自分の子供のことになると、感情的になりすぎてしまう親が多くみられます。自分の子供のことですから、当たり前と言えば当たり前のことなのですが、あまりに度を越してしまうと子供の発達を妨げてしまう事にもなりかねません。冷静に判断することが、療育には大切なのです。
私がよく使う例ですが、あるお医者さんのお話です。患者さんがある病気で来院し、薬を処方するとします。一週間後患者さんが再度来院し、あまり効果がなかったことと、旅行に出たので生活環境が変化した事を報告します。あまり効果がなかったのは、薬のせい?生活環境の乱れのせい?わかりませんよね。主治医として、もう一週間同じ薬を継続するよう処方します。それが、自分の子どものことになるとどうでしょう?一週間で効き目がなければ、次の薬に換えてしまうんです。次の1週間で効かなければ、他の要因があったとしても、また次の薬に換えてしまうんです。こういった感情的な決断を続けていると、何ヶ月たってもどの薬が効果があったのか完全にわからないことになってしまうのです。
アメリカでこんなお母さんがいました。自閉症の子を持つこのお母さんの心配事は、自分の子が他の子どもと遊ばない事。子どもが集まる場合になると、また他の子どもと遊べないのではとお母さんの不安が募ります。子どもが集まる場面で、お母さんのと子どもの様子を見せてもらいました。お母さんは、明らかに不安そうです。「遊んでらっしゃい。」と子どもに言い渡し、お母さんが近くにいては子ども同士で遊べないとでも思ったのでしょうか、子どもに隠れてゆっくりとその場から立ち去ろうとしています。逃げ出そうとする親をみて、子どもはお母さんにしがみついてしまいました。不安そうな顔でお母さんが逃げ出そうとすれば、子どもが母さんにしがみついてしまうのも仕方ありませんよね。自閉症だから他の子どもと遊べないと言うより、お母さんがこんな状態では、子どもはリラックスして遊べないでしょう。ただ、不安が募るあまり、お母さん自身それに全然気づけないという事もあるのです。
子どもが転んだ時、子どもは大丈夫そうなのに、お母さんが「まあ!大丈夫?痛かった?」と大げさにリアクションするあまり、親の不安そうな顔を見て子どもが泣いてしまうっていうこと、よく見かけませんか?親はリラックスしてゆっくり対応策を考えることが必要なのです。子どもがちょっと転ぼうが、ちょっと他の子どもと遊ばなかろうが、あわてても仕方ありません。不安になるのではなく、ではどうしようか?冷静に対策を考える必要があるのです。